1.1節の復習
前回は、「純物質」と「混合物」について紹介した。
その中で、「単体」が登場した。
「単体」は、1種類の元素からできた物質である。
例えば、H2、O2などがある。
H2Oは、HとOの2種類の元素からできているので、「単体」ではなく「化合物」に分類される。
同素体
それぞれの元素において、単体は基本的に1つしかない。
HだけからなるものはH2のみであり、NだけからなるものはN2のみである。
しかし、例外が4つある。
その元素がS(硫黄)、C(炭素)、O(酸素)、p(リン)である。
覚え方は「SCOP(スコップ)」。覚えやすいですね。
この例外のことを同素体という。
同素体は、同じ種類の元素からなる単体で,性質の異なる物質どうしのことである。
S(硫黄)
S(硫黄)には、同素体が3つ存在する。
同じSだけから構成されているが、構造が異なっているので、性質も異なっている。
物質名 | 化学式 |
斜方硫黄 | S8 |
単斜硫黄 | S8 |
ゴム状硫黄 | S∞ |
硫黄の化学式はSと表記されていることがほとんどであるが、実際には、上の表のとおりである。誤ってもS2と書かないようにしよう。
硫黄の結晶は通常、斜方硫黄で存在し、黄色の結晶である。
この斜方硫黄を加熱し95℃以上にした後、冷やすと、黄色の針状の結晶ができる。これが単斜硫黄である。
さらに温度を上げていくと119℃で硫黄はどろどろの液体(融解)になっていく。
これをさらに過熱して250℃以上した後、急冷すると黒っぽい(褐色)の弾性のあるゴム状硫黄ができる。
C(炭素)
物質名 | 化学式 |
ダイヤモンド | C |
黒鉛 | C |
フラーレン | C60、C70など |
C(炭素)の同素体はいろいろある。
最低限、知っておきたいのがダイヤモンドと黒鉛。
たまに出てくるのがフラーレン。サッカーボールのような形をしている。
他にもカーボンナノチューブなどもある。
ダイヤモンドや黒鉛は身近にあるので、違いを知っている人も多いだろう。
特徴 | 例 | |
ダイヤモンド | 無色透明できわめて硬く、電気を通さない | 指輪などジュエリー |
黒鉛 | 黒色不透明で軟らかく、電気を通す | 鉛筆やシャーペンの芯 |
なぜ、こうも違うのかは、炭素の結合の仕方が違うからである。それは追々紹介することにしよう。
O(酸素)
O(酸素)の同素体は2つである。
物質名 | 化学式 |
酸素 | O2 |
オゾン | O3 |
酸素は、生き物にとって必要不可欠なものであり、空気中に約20%存在する。ものが燃える時にも重要な働きをする。
オゾンは、オゾン層でおなじみかもしれない。
作り方は、酸素中で無声放電したり、酸素に強い紫外線を当てたりすると生成する。
無声放電と対極にあるのが火花放電。火花放電は放電すると、火花が出る。つまり、無声放電は火花が出ない放電のことと考えるとよい。
特徴としては、淡青色で特有のにおいをもつ(特異臭)気体で、有毒。強い酸化力をもち、殺菌・漂白作用を示す。
P(リン)
リンって漢字でどう書くか、知っているだろうか。「燐」である。「隣」と似ているので注意が必要である。
物質名 | 化学式 |
黄リン | P4 |
赤リン | P |
リンには同素体は教科書に出てくるものが2つある。それが上の表のものである。
それ以外にも、白リン、黒リン、紫リンなどがある。
有名な2つだけ、特徴を紹介しておこう。
黄リンは、淡黄色のろう状の固体、極めて有毒。容易に酸化され、自然発火しやすい。そのため、水中で保存する必要がある。空気を断って250℃に保つと、赤リンに変化する。
赤リンは、暗赤色の粉末で、融点は高く、毒性はない。自然発火もしない。マッチの側薬にガラス粉を混ぜて塗ってある。