「元素」と「単体」
第1章2.1節で、「元素」と「単体」の違いについて紹介した。
もう一度、おさらいしておこう
- 「元素」は、「成分」の意味で用いられる。
- 「単体」は、実際に反応したり、生成した物質の意味で用いられる。
物質には、いろいろな「成分」が含まれている。これを調べるのが「元素分析」である。
つまり、「元素分析」というのは、「元素」=「成分」を分析することなのである。
元素分析
では、物質にどんな元素が含まれているか、どのような方法があるのだろうか。
よく出てくるのは次の2つ。
- 炎色反応
- 沈殿
1.炎色反応
ある金属を含む物質をガスバーナーの外炎に入れると、特有の色が現れる。
*外炎とは、ガスバーナーなどで火を出すと外側の薄い淡い青色をした部分のことで1500℃くらいである。それに対して、内炎は、青から青緑の明るい炎で、その表面では1800℃程度の高温になっている部分のことである。内炎の内側は500℃以下程度の温度となっている。
元素記号 | Li | Na | K | Cu | Ca | Sr | Ba |
元素名 | リチウム | ナトリウム | カリウム | 銅 | カルシウム | ストロンチウム | バリウム |
炎色反応 | 赤 | 黄 | (赤)紫 | 青緑 | 橙(赤) | 紅 | 黄緑 |
覚え方は「リアカー無きK村、動力かろうとするもくれない馬力」と、よく言われるが、語呂合わせなので自分が覚えやすい覚え方をするとよいでしょう。
リアカー(Li・赤)無き(Na・黄)K村(K・紫)、動力(銅・青緑)かろうと(Ca・橙)するもくれない(Sr・紅)馬力(Ba・黄緑)
ここで知っておくと便利なのは、銅Cu以外は、すべてアルカリ金属・アルカリ土類金属に分類されるものが、炎色反応を示すことである。
ちなみに、アルカリ金属は「周期表でHを除く1族の金属」のことで、アルカリ土類金属は「周期表でBe、Mgを除く2族の金属」のことである。
例えば、食塩(塩化ナトリウム)を外炎にいれると、ナトリウムが含まれているので、黄色の炎が出る。
この炎色反応を利用したのが、花火である。
2.沈殿
化学反応により、溶液中に不溶性の固体を生成する。
化学反応については、詳しく解説するのはもう少し後に。
- 塩素原子Clの検出
- 銀Agを含む溶液と混ぜる → 塩化銀AgClの生成(白色沈殿)
- 鉛Pbを含む溶液と混ぜる → 塩化鉛PbCl2の生成(白色沈殿)
- 二酸化炭素の検出 → 石灰水に通す(白色沈殿)→ さらに二酸化炭素を通すと無色透明になる
1については、ClはAgやPbとくっついて白色沈殿を生じることを利用している。
具体的には、
1.1は、Cl-(塩化物イオン)を含む場合、Ag+(銀イオン)を含む溶液と混ぜると、水に溶けにくいAgCl(塩化銀)ができる。
Ag++Cl-→AgCl ↓(白色沈殿)
1.2は、Cl-(塩化物イオン)を含む場合、Pb2+(鉛イオン)を含む溶液と混ぜると、水に溶けにくいPbCl2(塩化鉛)ができる。
Pb2++2Cl-→PbCl2 ↓(白色沈殿)
*↓は沈殿することを表す。
*Cl-(沈殿)の沈殿はAg、Pbの2つがよく出てくるので覚えておきたい。
2は、石灰水に二酸化炭素を通すと白く濁る。
この話は、小学生の時に習った人もいるかもしれない。
具体的には、
Ca(OH)2+CO2→CaCO3 ↓(白色沈殿)+H2O
白く濁った正体が、炭酸カルシウムCaCO3で水に溶けにくい。炭酸カルシウムは、大理石やチョーク、鍾乳洞の成分である。
この炭酸カルシウムCaCO3にさらにCO2を反応させると、水に溶けるので無色透明になる。
CaCO3+H2O+CO2→Ca(HCO3)2